2021.09.30

ウッドショックに関する工務店からの法律相談最新情報

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ウッドショックで大きく問題となっているのは、樹種を変える、工期が伸びる、原価高騰で請負工事代金の増額を考えなければならないなどといった事項であり、それぞれに法的な問題がある。ウッドショックにおいては、お客様と工務店が戦っている場合ではなく、誰が悪いのかという責任論は棚上げにして、しっかり手を携えてこの困難を乗り越えていくことが大事であるという方針で合意書の締結をお勧めした。

そして、新建ハウジングのWebに当事務所で作成した合意書の書式を掲載して多くの工務店に活用いただいた。ある工務店のWebに合意書を差し出すことの是非というブログが掲載されていて、新建ハウジングの三浦社長から『秋野先生の合意書がTwitterで叩かれているよ』と教えてもらった。何が叩かれているかというと、「ウッドショックをさも正当化して錦の御旗に掲げて、そして当然工期は延長、もしかしたら請負代金が上がってしまうかもしれない。本来的には工事請負契約は、仕事の目的物がいつまでに完成するかを約し、これに対して代金を支払うことで請負契約が成立するので、工期内に約束した代金で工事をするのは請負人の義務であり、それを公然と放棄するような対応は、何事だ」という声が上がっているようだ。私が申し上げたいのは、お客様も納得しなければ合意書にサインはしない。合意書にサインするためには、それ相応に今起きているウッドショックの事象を説明しなければならない。医療のインフォームドコンセントと同じである。この困難な難局を乗り越えていこうとする姿勢が大事で、十二分の説明をして納得した上で合意書にサインをしてもらい、工事に入るように指導を徹底的に行っているので、私の周りの工務店でウッドショックのトラブルは一切無く事前予防が完璧にできている。その上で法律相談の現場は応用である。

「秋野先生の作る合意書は表現が堅く、もう少し謙って作成しなければ何様だと思われるので「〜をご承諾お願い申し上げます」にしたらどうか」と言われることもあるが、最後の語尾は「承諾する・合意する」という文言で終わるようアドバイスしている。

さて、ポイントは工事の変更として樹種の変更に同意いただくことである。改正民法で瑕疵担保責任が種類・品質・数量に関する契約不適合責任という言葉に変わった。例えば、レッドウッドを使うと仕様書に明記されているのに桧や杉を使った場合、種類に関する契約不適合となりうるので樹種の変更合意を交わすことをお願いしたい。また、皆さんの請負契約の中では、お客様からしか追加変更を求める権利を定めていない請負契約約款が多々ある。ウッドショックの教訓として、請負人も工事の内容の変更を求める権利を有していることを気付いてもらいたい。工務店が使っている請負契約書には定められてない場合があるので、私どもの合意書では特約として追加変更の権利を定めさせていただいている。

次に、工期の延長も、お客様に状況を説明し理解していただき、特約で変更を求められるようにする必要がある。

頭が痛いのが請負代金の増額で、当事務所の合意書には請負代金が適当でないと認められるときは、甲に対して請負代金の変更を求めることができる条項が明記されている。ただ、お施主さんからすると不安で、何かしらの目安・基準がないかと問われたケースがある。

原価高騰に対してスライド条項が設けられている場合があり、公共工事の標準請負契約書に1000分の15を超える原価高騰が発生した場合には請負代金変更権が発生する契約約款が使われている例がある。

木材だけでなく全体的に仕入原価が高騰しており、原価管理をし、今進行中の当該物件が赤字になるなら勇気をもって値上げをお願いせざるを得ない。しかし、トラブルが発生するのは完成後に値上げの交渉をする場合である。お客様に常に状況を報告しながら工事を進め、減額工事の調整を図ることが大事である。そして、工事代金を変更する場合は建設業法上きちんと書面を交わし、トラブル防止に務めてもらいたい。

ウッドショックが一過性ならば合意書で例外的な特記事項で処理をすればいいが、どうやらまだ続きそうである。それならば、請負契約約款の中にウッドショックに適合する条項を入れ込んで、お客様に対して説明をして欲しい。合意書を作成するメリットは、サインをしてもらうために必ず十二分の説明をする良い側面がある。工事・工期・代金の3つの変更の中にウッドショック対応条項を入れていただきたい。

当事務所が推奨する請負契約約款を解説します。今まで色々なリスクに気を配って工務店有利な契約書を作ってきたが、ウッドショックに関連する条項は入れていなかった。また、新型コロナウイルスにも感染症と言う言葉が抜けて対応できなかった。当事務所の請負契約約款は、民法改正後すでにバージョン5を数える。それだけ動きがあるのだと感じている。

具体的には、工事変更に関しては、建材等の価格高騰・輸入量の減少や遅延その他経済情勢の「変化」と書いてある。今回はリーマンショックの様な経済情勢の「激変」ではないので、「変化」という表現を使って、それに伴う建材等の納品遅延がウッドショック対応となっている。この様に、請負契約約款は常に書き換えて使用してもらいたい。面倒だなとお考えの方は、当事務所の約款を使用いただければ絶えず最新となっている。

ウッドショックで一番心配したのが建築職人の方々で、元請が構造材を調達できずに休業が続くようでは問題である。サイディング業界の団体の顧問弁護士をしており、「元請に頼るのではなく直で営業できる環境づくりをしては」と提案したが、職人に営業は難しいとの返答があり、SDGsでいえば貧困・飢餓から救済できるのは、元請工務店の仕事だと思っている。私のWeb講演では、工務店の安全協力会の各職人は工務店を信頼しているので、ウッドショックの中でも下請・職人の生活を守るために、キッチンリフォームやOB客の営繕仕事なども受注して職人が困らない努力をお願いしている。そこをきちんと考えることが元請工務店の役目であり建築業界を維持していくために重要なことである。

次にウッドショックで原価高騰が起きている状況で値上げしますかという問いと課題がある。「ウッドショックを理由とした請負代金の増額はしない」と宣言している会社もあるが、そのしわ寄せがどこに行くか考えなくてはいけない。工務店の適正利益は販管費を含めて原価割れで赤字体質になってしまってはダメである。他方で下請に我慢を強要しても業界の衰退を招くので、適正な利益を確保するためには値上げをするしかないという結論に達する。それには、お客様が値上げに賛同しやすい引き出しを沢山持つ必要がある。今後は工務店も値上げの訓練をしなければいけない。

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2023年には消費税のインボイス制度が始まる。下請の職人さんが消費税を納税していなければ、元請は仕入れ控除ができなくなり支払う税金が高くなるので、下請の職人は消費税10%を払う必要がある。今までは収入が1000万未満であれば免税業者として消費税分を益税で取得できたが、今後はできなくなる。これらのことからも値上げは避けては通れない課題である。

しかし、今住宅業界を支えているマインドとして低金利があるが、一方で賃金が上がらない中で、住宅価格ばかり値上がりしたら住宅需要が冷え込んでしまうと住宅業界の持続可能性に影響を及ぼしかねない。住宅価格を上昇させるには、それなりの納得感を社会と消費者に付与していかねばならない。

その一つとして建物の性能がある。長期保証の雨漏り保証と構造保証を分断して、雨漏りは経年劣化があるので最長で20年、構造はしっかり建てれば60年保証も可能であり、お客様に性能が向上した分の価格交渉をすれば説得力がある。

それとレベニューシャアという概念を紹介する。これは、新築の買取り保証で3000万が4000万になっても30年後にこの建物は価値が下がらないので、2000万で当社が引き取るというものである。ただし、3年目からの有償メンテナンス工事で維持管理をしていただくことが条件となる。これは、最初の初期投資(建築費用)は抑え、その後に出てくる利益配分(有償メンテナンス費用)で設ける仕組みである。アパート建築なども建築費は抑えて、維持管理費で時間をかけて回収するケースがある。仕組みは簡単で、請負契約約款の最後に維持保全と継続工事の特約を付けるだけである。

維持管理としては、発注者及び受注者は、本契約に基づき完成させた本契約物の価値を維持向上させるため別途発注者を委託者、受注者を受託者とする維持管理業務委託契約を締結するものとする一文を入れる。そして、継続工事の特約は、発注者及び受注者は本契約に基づき完成させた本契約の目的物につき、受注者に対し継続して追加工事を発注することができるものとし、当該追加工事の発注があった時は発注者より受注者は競技のうえ追加工事の内容を決定し、別途工事請負契約を締結するものとする一文を入れるものである。ポイントは、価格を抑える努力はハーフビルドでも出来ることである。

ハウスプラス住宅保証のハウスプラス確認検査の顧問弁護士をしているが、検査員と喧々諤々の議論をしたが、ひとつの案として、基礎や木材は太いものを使い構造はきちんと確保し、床は合板のままで、壁や石膏ボートは施工するが仕上げのクロスは無し、住設機器はレンタルでスタートするなど最初はなるべく安く作り、お客様はお金を貯めながら後にキッチンのリフォームをするなど、DIYとリフォーム工事の受注をする方法で初期投資を抑えることも引き出しの一つである。

原価高騰で値上げしたら消費マインドに負けてしまう事例がでてきた時、値上げをしなくて出来ることに、OB顧客にお金払ってもらえるビジネスモデルとして、掃除サービスや高齢者宅見回りとか感謝されながら儲けるビジネススキームを模索することも必要である。それに必要な契約書は依頼をいただければと思う。

この様な色々な事に対応するために、月刊誌を発行しました。第4号ではあいけんの横井会長にも登場いただく予定である。月刊誌の購読者には契約書の雛形を利用できる特典がある。また、当事務所が企業ホーム実績で記載している内容は全て弁護士見解書を提供して参るので購読頂きたい。

私の将来的な目標と夢ですが、職人さんが元請から不利な契約と知らずに結ばされている現状がある。それらの契約書をAIが審査してチェックできれば安価になると思い、先月から取り組みを始めた。10年後には実現させたいと考えている。

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